感性を仕事にするために。SIRI SIRI school「ATRIUM」への思い

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日本の手仕事を生かし、そのつくり手とともに、未知なる領域の造形を生み出してきたジュエリーブランド、SIRI SIRI。一方で、至近距離でつくり手と向き合い、創造を繰り返すなかで感じてきた、ものづくりの在り方に対する問いは膨らんでいきます。

現代に求められる新しい職人像とは何か?

これからのつくり手には、何が求められているのか?

それは、つくり手なくしては成り立たないSIRI SIRIだからこそ、避けては通れない問いでもありました。

技術を土台とし、感性や感覚を自由に生かしながら、一歩先を行くものづくりを実現する。多角的な視点を得て、個性あるつくり手が、自らの手で持続可能な生業を生み出す。そのために必要な学びを得られるのが、2019年、SIRI SIRIがスタートする若いつくり手たちのための学びの場、SIRI SIRI school「ATRIUM」です。

ジュエリーブランドが、なぜつくり手に向けたスクールを始めるのか? その真意とそこに込められた思いを、担当するSIRI SIRIスタッフ福田知桂さんと事務局の河野奈保子さんに伺いました。

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福田知桂|chika fukuda(写真左)

生産管理スタッフ/SIRI SIRI school「ATRIUM」担当。鹿児島県出身。服飾系の専門学校を卒業後、洋服の販売、アクセサリーのパーツ専門店での企画販売を経て、2013年にSIRI SIRIのインターン生となる。約1年半、パーツの組み立てや販売補助などを手伝い、2015年より正社員に。現在は、生産管理を担当している。

河野奈保子|naoko kono(写真右)

1980年千葉県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。 2015年よりNPOグリーンズの学校事務局/企業・行政との協同案件のプロジェクトマネージャーを担当。学びの場づくりに長年携わっている。自身もSIRI SIRIのジュエリーを愛用する1ユーザー。

SIRI SIRI がスクールを始める理由

福田:私は普段、職人さんとデザイナー岡本との間をつなぐ仕事をしています。職人さんと直接触れ合っていると、若いつくり手のみなさんが、知識や技術を生かして活動していくことについて、ずっと迷っているという印象を受けました。これは収入になるのだろうかと不安に思いながらも、自分をどうやって売り出したらいいのかがわからなかったり、どう社会とつなげていっていいのかがわからない。自分の能力を人に伝えることが難しいと感じている方が、想像以上に多いんですね。

-確かに、作家さんや職人さんには、つくっているものをベースに仕事を生み出すのが苦手な人が多い気がします。

河野:本当にそうなんです。今は、違う土俵の人たちと仕事をしていくとき、どうしてもつくり手が下請けのようになって不利になることが多い気がしています。それってすごくもったいないですよね。つくり手には、好きに物をつくれるという武器があるのだから、それを使って、面白い物を一緒につくれる人との出会いを生み出せたら、ものづくりの可能性がもっと広がるんじゃないでしょうか。つくり手も、企画する人も、営業する人も、全員が対等であるようにしたいというのは、今回のスクール運営のお話を伺って、すごく思っています。

-対等でないから、それ以上の可能性が広がっていかないし、どんなにすばらしい物をつくっても、収入に反映されていかないということですよね。

福田:はい。実際、ベテランの職人さんの中には、後継者をどうするか、この技術をどう伝えていくかということを考えている方がいらっしゃる一方で、収入が少なく生活が苦しくて、この先どうなるかわからない技術を若い人に継がせたくないという人もいるんです。

伝統は、新しいものとの組み合わせでどんどんつながって続いていくものだと思います。それが、生活できないからという理由で縮小して、淘汰されていってしまう。この現状は、もうちょっとなんとかできないかなと思っています。そして、その部分を導ける学びの場が意外とないなと思ったことが、スクールを始めるきっかけでした。

「ATRIUM」は、つくり手のためのスクールといっても、技術や基礎知識を身につける場ではありません。ものづくりを生業としていくために必要なことを学ぶ場というイメージです。たとえば感性や美意識を養うこと、人とのつながりづくりからものづくりの考え方まで、トータルで学ぶ手助けができたらと思っています。


感性をインプットし、思いをアウトプットする

-講座の具体的な内容を教えてください。

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福田:「ATRIUM」の講座は全8回です。作家さんや職人さんなど、ものづくりをしていて、学びたいという人ならどなたでも参加可能です。今回はSIRI SIRIで扱っている素材の中から「籐」を使った作品を、受講生全員につくってもらいます。普段扱っている素材は参加者それぞれ違うと思いますが、同じ素材に統一したほうが考え方や個性が出やすいかなと思いました。作品は、講師の人たちに講評してもらおうと思っています。

講師はいろいろな観点でものづくりに携わっている人たちにお願いしています。今回は使う素材が藤なので、藤の作家さんがどうやってSIRI SIRIと仕事をしているのかを知ってもらうために工房に伺います。あとは工芸・民芸の専門家の方に、今後の手仕事がどうなっていくのかを伺ったり、ブランドPRをしている方に、商品をどう見せて伝えていくか、お客様の視点でものを見ている方のお話もお聞きしたいと思っています。もちろんSIRI SIRIのデザイナーの岡本も参加します。

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河野:福田さんがいちばん現場に近いところで見てきた思い、デザイナーの岡本さんの全体を通じた思い、代表の小野さんの冷静なアドバイスをバランスよくまとめたカリキュラムになっていると思いますね。

福田:変わったところでは、感性にグッと寄って、'花'道家の先生に講師をお願いしたりもしています。華道はものづくりとは少し違って、ひたすら感性でその空間を造形していくものですよね。そういう方にお話を聞いたり、自分でもお花を生けることで見えてくるものがあると思います。

-それは面白そうですね。ものづくりに対する多角的な視点が得られそうです。

福田:それと、職人さんには自分を表現するのが苦手な人が多いので、その練習もやろうかと考えています。

-自分を表現する練習?

福田:講師から学んで得たインプットを、ちゃんとアウトプットしていく時間をつくるというか。本を読んできてもらって、その感想を話し合ったりもしようかなと考えています。インプットとアウトプットを一緒にやっていくことで、対等に話ができる基礎をつくります。

河野:作家さんや職人さんには、自分で提案ができる人が本当に少ないと思います。今はSNSもあって、自分で発信する人も出てきてはいますが、母数としてはまだ多くはありません。きれいなものを見つけたり、内面を作品にしたときに、それを人に伝える力はとても大切です。なので、職人さんたちの、言葉によるアウトプットの時間をつくったらどんな変化が起こるのかっていうのは、私も興味がありますし、楽しみだなと思っています。

それに、アウトプットを繰り返す中で誰かに何かを言ってもらうことは、じつは次のアクションの後押しにもなるんですよね。それは私がこれまでやってきた学びの場づくりでも大事にしてきたことです。

新しい職人像とは?

-話を聞いていると、職人の在り方も、昔と随分変わり始めているのだなと感じます。福田さんが考える、新しい職人像とはどんなものですか?

福田:たとえば、ただ言われたものをつくるだけじゃなく、まったくないところから提案ができたり、「こうしたらどう?」という話ができるといいですね。そこからよりいいものが生まれてきたら、ものづくりとして理想的なんじゃないかなと。そういう進化系の職人さんがたくさん生まれることで、また違った景色が見られるような気がしています。

-SIRI SIRIとしても、職人さんからの提案は大歓迎ということですか。

福田:はい。デザイナーはデザインの観点からしか案が出せません。でもつくり手さんは「こういう形をつくりたい」と言ったときに、素材や技法から「これはできます」「これはこの部分が不安」といったことがわかるんですね。SIRI SIRIはその掛け合いがあることでいいものができたり、安全性を確保できているブランドだと思います。

もちろん、その提案もなんでもいいわけじゃなくて、いいものでないといけません。そのためには、つくり手側もあらゆる能力を上げて、考え方を変えていく必要があります。職人さんが感覚や感性を磨いたうえで、あと一歩進んで提案したり、発信ができるようになると、きっともっとすごいものができる。その可能性を、SIRI SIRIとしても探ってみたいですね。

-職人さんの意識のボトムアップが、SIRI SIRIのものづくりのボトムアップにもつながるわけですね。

福田:若い人の中にもセンスが良かったり、勘がいいつくり手さんは多いので、今回のスクールのような場で学んでいくことで、感性の部分でもどんどん吸収していってくれると思います。早い段階から、技術と感性、両方を取り入れて物をつくっていく人が現れて、10年、20年とやっていくと、また新しい職人の在り方、今の職人像とは違う職人像が生まれていくはずです。

ちなみに、そういうことが一緒にできそうな方がいたら、いずれはSIRI SIRIの中に入っていただくことも可能性としてあります。というより、私たちもそれを期待している部分は大いにありますね。

すべてのつくり手に自信を持ってほしい

-最後に改めて、どんな人に参加してほしいか聞かせてください。
福田:今やっていること、つくっている物で生きていきたいと思ってる人に参加していただいたら、広い視野が持てて、ちょっと先の未来が見えてくると思います。自分がいいものをつくっていて、これを続けていきたいと思ってる人には、ぜひきていただきたいですね。

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河野:稼ぎたい人にきてもらいたい(笑)。はっきり言っちゃいましたけど、これは大事なことだと思います。私は普段、ソーシャルデザイン領域の仕事をしているのですが、ソーシャルデザインにも、ものづくりの世界にも共通するテーマは、自分の好きなことや大事にしていることを持続的に回していくためにはどうしたらいいかということなんですね。それはつまり、今は持続的になっていないということ。それを解決するために必要なことがこのスクールでは学べるので、ものづくりの仕事を持続させたいと思っている人はぜひ参加してほしいです。

ちょっとビジネス的な話になってしまいましたが、そこに乗っているのは美意識とか、それこそ何かをつくれる技術です。それは、自分が生活していくうえで必ず糧になるもののはずだから、スクールを通じて、その自信をつけてほしい。すべてのつくり手にもっと自分のやっていることに自信をもってほしいと思っています。

SIRI SIRI school「ATRIUM」 詳細 はこちらをご覧ください。

http://sirisiri.jp/siri-siri-school/

募集は、1月23日水 23:59まで。

文 平川 友紀

写真 伊丹 豪

自由の探求者SIRI SIRI